
選びたかったカーテン
~靴を履いて料理する家で育った私が、インテリアを仕事にする理由~
インテリアコーディネーターの井上ナオミです。フリーランスで横浜を拠点に活動しています。
今回は、少しだけ私自身のことを。
なぜこの仕事をしているのか、なぜ空間を整えることに興味があるのか、原点の話をしたいと思います。
町家で暮らした子ども時代
私が生まれ育ったのは、京都府の小さな田舎町。
都会の便利さは決してありませんが、海がとても美しい大好きな町です。
そして、子どものころに住んでいた家は、
「町家(まちや)」でした。
……といって、ピンとくる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
土間と台所と鬼ごっこ
玄関を入ると、通り庭という土間が長く続いていて、台所(キッチンではなく、ここはあえて「台所」と呼ばせていただきます)は
その土間の中にありました。
そう、子供のころの私にとって、”台所は靴を履いて料理をする場所”。だったんです!
さらに、土間の奥には、勝手口が続きます。
昭和40年代半ばから50年代の初めごろ。
夏は今ほど暑くなかったので、よく玄関と勝手口を開けて風を通していたのを覚えています。
信じられますか?
近所の男の子が、鬼ごっこの途中にうちの玄関から入ってきて、勝手口から抜けていくことがあったんですよ(笑)。
タタタタ「こんにちはっ」タタタタター、「さよならっ」。
ん?。
今、誰か通ったよね?て。
途中で麦茶をゴクゴク飲み干していく”強者”もいました(笑)。
もちろん、こんな家に住んでいたのは、同級生の中でも私くらいだったと思います。
お友だちの家に遊びに行くと、「なんかうちはちょっと違うな……」と、子どもながらに感じていました。
晴れて引っ越し!新しい家へ。
小学校4年生のころ、引っ越しをすることになりました。
行き先は、注文住宅!新築です!
引っ越し前、不動産屋さんが両親と間取りを相談している様子がとても印象的でした。
「私の部屋ができるの?」
「きれいな家に住めるの?」
そのとき感じたワクワク感が、今も忘れることは出来ません。
選びたかったカーテン
新築祝いに、と親戚の方がカーテンを贈ってくれました。
「すごく良いものにしたからね」と言われて——
もちろん、ありがたくて、きっと本当に上質なものだったのだと思います。
実際、今もうっすらとそのカーテンの質感を覚えています。
風合いが良くて、どちらかというと“大人っぽい”雰囲気の。高価なカーテンだったのでしょう。
でも、ちょっとだけ、ショックでした。
やっぱり、自分で選びたかったんですよね。
高級でなくてもいい。
安くても、自分が「これがいい」と思った色や柄のカーテンをつけたかった。
子どもなりに、「自分の部屋」=「自分らしい空間」だと思っていたのかもしれません。
私の原点はここから
それからは、小さな部屋をいかに快適にするか、ということが一番の楽しみになりました。
模様替えをしたり、お気に入りの小物で飾ったり。
自分の部屋で過ごす時間が何よりの至福でした。
住空間が好きになったのは、この頃からでした。
そして大人になり、インテリアを仕事にするまで
こんな私が、大人になり、インテリアの仕事に就くのは、ある意味自然な流れ——ではあるのですが。
それが、そうすんなりとはいきませんでした。
長くなりますので、ここからは、また次の機会にお話ししたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。